まず見るのは肩関節(GH関節)
野球肩というと、肩甲骨が悪い。胸郭が硬い。股関節が使えていない。投球フォームが悪い。といったことがよく言われます。

もちろん、どれも大切です。

ただ、その前に確認したいのが、肩関節(肩甲上腕関節:GH関節)がきちんと動くかどうか。です。

肩そのものに痛みや可動域制限がある状態で、「もっと胸を張ろう」「股関節を使おう」「トップを早く作ろう」とフォームだけ変えようとしても、そもそも肩がそのフォームを作れる状態ではありません。

投球復帰のリハビリでも、肩関節の可動域や筋力を十分に回復させてから段階的な投球プログラムへ進むことが基本とされています。

投げ方を直す前に、まず投げられる肩を作る。

ここがスタートだと思っています。
投球側の肩、本当に動いていますか?
野球選手の肩をチェックすると、「本人は動いているつもり」でも、実際には投球側だけ動きにくくなっていることがあります。

例えば両手を上げてバンザイしてもらう。すると、右投げの選手で右肩だけ上がり切らない。少し腰を反って腕を上げている。肩をすくめないと最後まで上がらない。というケースがあります。

投球側の肩では、長年の投球によって内旋が減り外旋が増えるなど、正常な適応として左右差が生じることもあります。そのため、左右差があること自体をすべて異常と考えるわけではありません。

ただし、痛みを伴っている、総可動域が減っている、肩の挙上が明らかに制限されているなど、投球に必要な動きを妨げる制限は改善しておきたいところです。

痛みなく、必要な可動域まで十分に肩を動かせる。

これが投球復帰に向けた重要な条件の一つです。
小円筋・棘下筋など肩の後ろ側を確認する
PlusTRAINERSで野球肩の選手を見る時に、よく確認するのが肩の後方です。特に、小円筋や棘下筋を含む後方のローテーターカフの硬さです。

投球を繰り返す選手では、後方関節包や後方ローテーターカフのタイトネスが生じ、肩の内旋制限などにつながることがあります。こうした肩後方の柔軟性低下は、GIRD(肩甲上腕関節内旋制限)やインターナルインピンジメントなどとも関連しています。

だからといって、「野球肩だからとにかく後ろを伸ばせばいい」という単純な話でもありません。

どこが硬いのか。どの方向が動いていないのか。反対側と比べてどうなのか。実際の投球動作でどうなっているのか。そこを確認しながら必要な部分を改善していきます。
インターナルインピンジメントでもまず肩を見る
インターナルインピンジメントは、投球のコッキング期など、肩が外転・外旋するポジションで、腱板の関節面側と肩関節後上方の組織が接触することで症状が起こる病態です。

後方の肩の硬さや肩甲骨機能など、複数の要因が関係すると考えられています。関節唇損傷を伴うこともあります。

こうした選手でも考え方は同じです。
いきなりフォームだけを修正するのではなく、まず肩関節の可動域。後方の柔軟性。腱板機能。痛みなく外旋できるか。など、GH関節の機能を確認します。

肩そのものが十分に動かない状態で、きれいな最大外旋を作ることは難しい。

まずは肩の機能。その次に肩甲骨。そこから投球フォーム。この順番を大切にしています。
関節唇損傷があっても「画像だけ」で考えない
MRIで、「関節唇が損傷しています」「SLAP損傷があります」と言われる選手もいます。
もちろん医師による診断は非常に重要ですし、状態によっては手術が必要になるケースもあります。

一方で、MRI上の関節唇の変化が必ずしもその選手の痛みのすべてを説明するとは限りません。実際、症状のない野球選手でもMRIで関節唇などの異常所見が認められることがあります。

そのため、「MRIに損傷がある=もう投げられない」と単純に考えるのではなく、医師の診断を受けたうえで、痛み。可動域。筋力。肩関節の安定性。投球時の症状。競技レベル。などを総合的に見ていく必要があります。

SLAP損傷などでも、まず保存的なリハビリテーションが選択されるケースがあり、肩関節の可動域、腱板・肩甲帯の筋力や神経筋コントロールを改善することが推奨されています。

実際、PlusTRAINERSに来る選手でも、まだ肩関節機能が十分に回復し切っていない状態で、投球復帰しようとしているケースは少なくありません。

まずそこをしっかり戻します。
肩甲上腕リズムも確認する
GH関節が動くようになったら、次に見たいのが肩甲骨との連動です。

腕を上げる時は、上腕骨だけが動いているわけではありません。肩甲骨も一緒に動きます。この連動を肩甲上腕リズムと呼びます。

肩関節が十分に動いていても、肩甲骨がうまく上方回旋・後傾できなければ、投球時に肩へ負担が集中する可能性があります。

PlusTRAINERSでは、この肩甲骨の動きを作る筋肉の中でも僧帽筋下部の働きをよく見ています。
投球選手のリハビリでも、下部僧帽筋や前鋸筋などを含む肩甲骨周囲筋の機能を整えることが重視されています。

ただ、ここでも順番は大切です。
GH関節が硬いのに、肩甲骨だけ頑張らせて腕を上げる。という状態にはしたくありません。

肩関節そのものを動かせるようにしたうえで、肩甲骨とうまく連動させていきます。
その次に胸郭・体幹・股関節
肩関節。肩甲骨。ここが整ってきたら、さらに全身へ広げます。

胸郭。体幹。骨盤。股関節。下半身。
投球動作は全身運動なので、当然これらも重要です。

下半身で作った力を骨盤、体幹、胸郭、肩甲骨、肩、肘、ボールへ伝えていきます。

オーバーヘッドアスリートのリハビリでも、肩だけではなく体幹や下半身まで含めた運動連鎖を考えることが重要とされています。

ただし、肩が痛くて動かないのに「原因は股関節です」と股関節ばかりトレーニングする。これも少し違うと思っています。

患部外も大切。全身を見ることも大切。

でも、野球肩であれば、まず肩関節をしっかり見る。
そのうえで全身へ広げていく。この順番が大切です。
投球フォームではトップのタイミングを見る
身体機能が整ってきたら投球フォームも確認します。
内側型野球肘の記事でも書きましたが、肩でも特に見るポイントの一つが、トップを作るタイミングです。

踏み出し足が接地する頃までに、投球側の腕が投球に必要な位置へ準備できているか。
トップが遅れて腕が身体の動きについてこられない状態になると、肩や肘へ負担がかかりやすくなります。

そしてトップを作った後は、腕だけでボールを投げない。股関節から力を作る。骨盤を回す。体幹を回す。胸郭の動きを使う。その力を最後に腕からボールへ伝える。

股関節・体幹主導で作った力を、肩から先へ伝えていく。
そんな投球動作を目指します。
フォームを直せる身体になっているか?
これは野球肩のリハビリでとても大切だと思っています。

フォーム修正をしようとしても、肩が上がらない。外旋できない。肩の後ろが硬い。最大外旋で痛い。という状態では、その選手に理想のフォームを求めても身体がついてきません。

だから、フォームの前に身体機能です。
肩関節を痛みなく十分に動かせる。肩甲骨と連動できる。その上で胸郭や股関節を使う。そして投球フォームを作る。この順番です。
痛みがなくなっただけでは投球復帰ではない
野球肩の選手は、投球を休むと比較的早く痛みが減ることがあります。
すると、「もう投げられそう」となります。

でも、痛みがなくなったことと、投げられる肩に戻ったことは同じではありません。
肩の可動域は戻ったか。バンザイはしっかりできるか。肩後方の硬さは改善したか。腱板は働くか。肩甲骨と連動できるか。最大外旋を痛みなく作れるか。

そこまで確認してから投球負荷を上げていく。

投球選手のリハビリについても、十分な可動域を取り戻さないまま投球プログラムへ進むと、症状なく競技復帰することが難しくなるとされています。
まず「投げられる肩」を取り戻す
野球肩になると、フォームが悪いから?肩甲骨が悪い?胸郭が硬い?股関節が使えていない?と、いろいろな原因を探したくなります。

もちろん最終的には全部見ます。

でも僕がまず確認したいのは、肩関節そのものが正常に機能しているか。です。

関節唇損傷。インピンジメント。インターナルインピンジメント。診断名は違っても、痛みなく必要な可動域を使える。腱板が機能する。肩甲骨と連動できる。そこから全身を使って投げる。という流れは非常に重要です。
フォームや患部外トレーニングの前に、まず肩関節の機能をしっかり戻す。

そして、「痛くない肩」ではなく、「投げられる肩」に戻してから投球復帰する。
野球肩のリハビリでは、これを大切にしています。