野球肘はスポーツに詳しい医師に診てもらいたい
整形外科といっても、それぞれの医師によって得意とする分野があります。- 膝を多く診ている先生
- 脊椎を専門としている先生
- 肩や肘を専門としている先生
- スポーツ障害を多く診ている先生
などさまざまです。
日本整形外科学会には、整形外科専門医を取得した上で、さらにスポーツ医として研修を受けた「日本整形外科学会認定スポーツ医」という制度もあります。
また、日本スポーツ協会にも、スポーツ障害・外傷の診断や治療、予防などを担う「公認スポーツドクター」という資格があります。
ただし、資格を持っているかだけではなく、実際に野球選手や野球肘、投球障害を多く診ているかも大切だと思っています。
野球肘は、「肘が痛い」という症状だけでは判断できません。
- 選手の年齢
- 骨の成長段階
- 痛みの場所
- 画像所見
- どの組織に問題があるのか
これらによって、投球を完全に休止した方がいいのか、どのタイミングから投球を再開できるのかも変わります。
特に成長期の選手では、骨や軟骨がまだ成長途中です。
だからこそ、「痛みが減ったから投げてみよう」ではなく、まず正確に状態を判断してもらうことが重要です。
PlusTRAINERSでも、医師の診断や投球許可を最優先にしています。
そのうえで、医療機関での診断・治療と、実際の競技復帰までのリハビリやトレーニングをつなげていくという考えでサポートしています。
必ずしも「痛みがある=一球も投げない」ではない
医師から完全な投球禁止を指示されている場合は、当然その指示に従います。一方で、病態や症状によっては完全なノースローではなく、医師の許可された範囲で投球動作を行いながら復帰を進めることもあります。
PlusTRAINERSでは、投球が許可されている選手であれば、フォームを改善しながら、痛みの出ない範囲で少しずつ投げていくという方法を取ることがあります。
ただし、「多少痛くても投げて慣らせばいい」という意味ではありません。
少しでも症状が悪化すれば負荷を戻す。無理をしないことが大前提です。
投げられる身体を作ってから投げる
僕が内側型野球肘のリハビリで大切にしているのは、「投げられる身体を作ってから投げる」ということです。単純に休んで、痛みがなくなった。
だから以前と同じフォーム、同じ強度で投げ始める。
これだけでは十分ではありません。
投球に必要な身体機能を確認し、問題があれば改善する。
そして、投球フォームも見直しながら少しずつ投げていきます。
まずは近距離から投球を再開する
医師から投球許可が出たら、いきなりブルペンで全力投球するわけではありません。PlusTRAINERSでは状態を確認しながら、
ネットスロー
↓
15m程度のキャッチボール
↓
塁間程度
↓
40m程度
↓
遠投
というように、数日ごとに少しずつ距離と強度を上げていきます。
ただし、全員が必ず同じ距離、同じ期間で進むわけではありません。
年齢やポジション、肘の状態、投球休止期間などによって調整します。
遠投になると、
「少し肘が気になる」
「何となく怖い」
という選手もいます。
その場合は無理に距離を伸ばさず、近い距離のまま投球強度を上げる方法でもいいと思っています。
遠くへ投げることが目的ではありません。
肘の状態を確認しながら、安全に投球負荷を上げていくことが目的です。
投げている時だけで判断しない
投球を再開したばかりの時期は、基本的には1日おきに投げてもらいます。見るのは、投げている時に痛くないか。だけではありません。
- 投球後に痛みが出ないか。
- 翌日に症状が悪化していないか。
ここまで確認します。
数回行って問題がなければ、徐々に連日の投球へ進めていきます。
その日のキャッチボールが問題なく終わっても、翌日に痛みが強くなるのであれば、まだ負荷が高すぎる可能性があります。
肘だけを見ても野球肘は改善しない
内側型野球肘だから、肘だけストレッチする。
肘周りだけ筋力をつける。
それだけでは十分ではないと思っています。
投球動作は全身運動です。
下半身で作った力を、
骨盤
↓
体幹
↓
胸郭
↓
肩甲骨
↓
肩
↓
肘
↓
そしてボールへ伝えていきます。
日本スポーツ整形外科学会も、投球動作は下肢・体幹・上肢の一連の動きであり、下肢や体幹の動きが悪くなると肩や肘への負担が増える可能性があると説明しています。
そのためPlusTRAINERSでは、肘だけでなく全身を見ていきます。
胸椎・胸郭と肩甲骨の動きを確認する
特に重視しているのが、投球時に最大外旋をきれいに作れる身体かどうかです。そのためには肩関節だけではなく、
- 胸椎・胸郭の柔軟性
- 肩甲骨の動き
なども重要になります。
股関節も同じです。
単純に、「股関節が柔らかいか」だけではありません。
投球フォームの中で股関節を適切に使えているか。
こちらを重視しています。
特に見るのは「トップを作るタイミング」
投球フォームを見る時に、特に注意しているポイントの一つが、トップを作るタイミングです。
踏み出し足が接地する頃までに、投球側の腕が投球に必要なポジションへ準備できているかを確認します。
よく、「肘が下がっているから、もっと肘を上げて」と言われることがあります。
でも、肘だけを高くすればいいわけではありません。
肘は高く見えていても、ボールの位置が低く、まだ腕が内旋位にある選手もいます。
この状態から急いで腕を外旋させて投げようとすると、肘や肩への負担につながる可能性があります。
そのため、肘の高さだけを見るのではなく、フットコンタクトまでにトップを作れているかを見ています。
腕だけで投げない
トップを作った後は、腕の力だけでボールを投げないことも大切です。骨盤を回す
体幹を回す
胸郭の動きや身体のしなりを使う
そして、その力を腕からボールへ伝える。
下半身や体幹で作った力を、最後に腕からボールへ伝える。
そんな投球動作を目指します。
肘を休ませて痛みがなくなっても、以前と全く同じフォームで投げ始めれば意味がありません。
投球強度が低い時期は、フォームを見直すチャンスでもあります。
遠投ができたらブルペンへ
遠投まで問題なくできるようになれば、次はブルペンへ進みます。PlusTRAINERSでは、
遠投
↓
ブルペンで立ち投げ
↓
ストレート
↓
変化球
↓
球数を増やす
↓
バッティングピッチャー
↓
シートバッティング
↓
試合復帰
というように段階を作っています。
ブルペンではまず立ち投げ。
そこからストレートを投げます。
問題がなければ変化球も加え、徐々に球数を増やしていきます。
ブルペンからいきなり試合には戻さない
学生野球では、ブルペンで投げられた。
次は試合。
となってしまうケースがあります。
できれば、その間にも段階を作りたいところです。
ブルペンでは打者がいません。
実際に打者へ投げると、
ストライクを取りたい。
コースを狙いたい。
打たれたくない。
もっと強いボールを投げたい。
自然と力が入ります。
そこで、
バッティングピッチャー
↓
シートバッティング
↓
試合
という段階を作る。
身体だけではなく、実戦で投げることにも慣らしてから試合へ戻す。
これが理想だと思っています。
大切なのは「投げられる身体を作ってから投げる」
内側型野球肘になると、「何日休めば投げられますか?」
ということに意識が向きやすくなります。
でも、休んだ日数だけで投球復帰が決まるわけではありません。
まず、野球肘に詳しい医師に状態をしっかり診てもらう。
その診断と投球許可を守る。
そして、投球に必要な身体機能を改善する。
フォームを見直す。
少しずつ投げる。
投げた後と翌日の反応を見る。
ブルペンから実戦形式へ段階を踏む。
「痛みがなくなったから投げる」のではなく、「投げられる身体を作ってから投げる」。
内側型野球肘からの復帰では、これを大切にしています。


