肩関節脱臼とは
肩関節は、肩甲骨の浅い受け皿に、上腕骨頭と呼ばれる丸い骨がはまることで形成されています。関節唇や関節包、靱帯、腱板などが協力して上腕骨頭を支えていますが、強い外力が加わると上腕骨頭が関節面から外れてしまいます。
完全に関節が外れた状態を脱臼、一部分だけ外れて元に戻る状態を亜脱臼といいます。肩関節脱臼の多くは、上腕骨頭が前方へ外れる前方脱臼です。
肩関節脱臼が起こりやすい場面
肩関節脱臼は、次のような場面で起こります。- 転倒して手や肘をついた
- 相手と接触して腕を後ろへ持っていかれた
- 腕を上げた状態で強くひねられた
- タックルやブロックで肩に強い力を受けた
- 投球やスマッシュの際に肩が抜けた
- スキーや自転車などで肩から転倒した
前方脱臼では、腕を横に開いて外側へひねった位置で力が加わるケースが多くみられます。
また、明確な脱臼まで至らなくても、同じような動作で一瞬肩が抜けて自然に戻る「亜脱臼」が起こることもあります。
肩関節脱臼に多い症状
- 肩に強い痛みがある
- 腕を動かせない
- 肩の形が左右で違う
- 肩がへこんで見える
- 腫れや内出血がある
- 腕や手がしびれる
- 肩や腕に力が入らない
- 肩が外れた、ずれた感覚があった
- 腕を上げると肩が抜けそうになる
- 特定の姿勢に強い恐怖感がある
脱臼に伴って神経や血管、骨、腱板、関節唇などを損傷することもあります。しびれや筋力低下が続く場合や、手が冷たい、色が悪いといった症状がある場合は、早急な診察が必要です。
脱臼した時の対応
肩関節脱臼は、早急に医療機関で処置を受ける必要がある外傷です。無理に腕を動かしたり、自分や周囲の人が肩を元に戻そうとしたりすると、骨折や神経・血管の損傷を悪化させる可能性があります。
肩が外れた可能性がある場合は、楽な位置で腕を支え、速やかに整形外科や救急外来を受診してください。
医療機関では、X線検査などで脱臼の方向や骨折の有無を確認し、上腕骨頭を元の位置へ戻す整復が行われます。整復後も骨や関節唇、腱板、神経などの損傷を確認するため、必要に応じてMRIやCTなどが行われます。
肩関節脱臼に伴う損傷
肩が脱臼すると、上腕骨頭が外れる際に関節周囲の組織を損傷することがあります。関節唇・Bankart損傷
前方脱臼では、肩関節の前方にある関節唇や関節包、靱帯が損傷することがあります。前下方の関節唇が骨から剥がれる損傷はBankart損傷と呼ばれ、脱臼を繰り返す原因になることがあります。
骨の損傷
脱臼時の衝撃によって、肩甲骨側の関節面や上腕骨頭が損傷することがあります。脱臼を繰り返すことで骨の欠損が大きくなり、肩関節がさらに不安定になるケースもあります。
腱板損傷
中高年の肩関節脱臼では、腱板損傷や腱板断裂を伴うことがあります。肩を元に戻した後も腕が上がらない、力が入らない状態が続く場合には、単なる痛みだけではなく腱板や神経の損傷を確認する必要があります。
反復性肩関節脱臼とは
最初の脱臼によって関節唇や関節包、靱帯などが損傷すると、肩を安定させる機能が低下し、脱臼や亜脱臼を繰り返すことがあります。症状が進むと、強い接触がなくても、
- 寝返りをした
- 服を着替えた
- 腕を後ろへ伸ばした
- 投球動作をした
- 手を頭の後ろへ回した
といった比較的小さな動作で肩が外れることがあります。
明確な外傷から始まる反復性肩関節脱臼と、もともとの関節の柔らかさなどが関係する非外傷性肩関節不安定症・ルーズショルダーでは、病態やリハビリの考え方が異なります。
肩関節脱臼後の治療
肩関節を整復した後は、損傷の状態に応じて装具や三角巾などで肩を保護します。固定期間や動かし始める時期は、年齢、脱臼の方向、骨折や腱板損傷の有無、競技、医師の治療方針などによって異なります。
保存療法では、肩の痛みや状態を確認しながら、
- 肩の可動域回復
- 腱板と肩甲骨周囲筋の筋力回復
- 肩関節の位置を感じる感覚の再獲得
- 腕を上げた位置での安定性向上
- 仕事やスポーツ動作への復帰
を段階的に進めます。肩周囲の筋力と動作コントロールを改善することは、肩関節の安定性を高めるうえで重要です。
肩関節脱臼後のリハビリ
1.可動域を回復する
肩を保護していた期間には、腕を上げる、外側へひねる、背中へ手を回すといった動きが制限されることがあります。ただし、脱臼後早期に肩を強く外側へひねるなど、脱臼した方向へ無理に動かすことは避ける必要があります。
主治医の指示と組織の回復状態を確認しながら、安全な範囲で可動域を回復させます。
2.腱板の筋力を回復する
腱板は、腕を動かす時に上腕骨頭を関節面の中央に保つ役割を担っています。最初は軽い負荷から始め、徐々に、
- 肩を内側・外側へひねる運動
- 腕を上げた位置での筋力トレーニング
- 動きながら肩を安定させる運動
- 繰り返しの動作に耐える持久力トレーニング
へと進めます。
3.肩甲骨の動きを改善する
肩関節の安定性には、肩甲骨が胸郭上で適切に動くことも重要です。腕を上げる時に肩がすくむ、肩甲骨が不安定になる、首周りに力が入り過ぎるといった問題を確認し、腕と肩甲骨が連動して動く状態を取り戻します。
4.肩の位置をコントロールする能力を高める
脱臼後は、肩が実際に外れていなくても「抜けそう」「怖い」という感覚が残ることがあります。壁や床に手をつく運動、ボールやチューブを使った運動などを通じて、肩に加わる力へ反応し、上腕骨頭を安定させる能力を高めます。
5.腕を上げた位置での安定性を取り戻す
日常生活では問題がなくても、腕を頭より高く上げる動作や、身体の後方へ動かす位置で不安定感が残ることがあります。競技や仕事に合わせて、
- 腕を上げた位置での筋力
- 素早い動作への反応
- 物を押す・引く能力
- 身体を支える能力
- 接触に耐える能力
を段階的に高めます。
スポーツ復帰
スポーツ復帰は、受傷から一定期間が経過しただけでは判断しません。次のような項目を確認します。
- 日常生活で痛みや不安定感がない
- 肩の可動域が必要な範囲まで戻っている
- 腱板や肩甲骨周囲筋の筋力が回復している
- 腕を上げた位置で肩を安定させられる
- 腕立て伏せなどで身体を支えられる
- 素早い動作でも肩が抜けそうにならない
- 競技動作を繰り返しても症状が出ない
- 翌日に痛みや不安定感が増えない
- 主治医から競技復帰の許可が出ている
コンタクトスポーツ
ラグビー、アメリカンフットボール、柔道、ハンドボールなどでは、筋力だけでなく、転倒や接触に対する準備が必要です。軽い接触から始め、肩を押される、相手を押す、腕で身体を支えるといった動作へ段階的に進めます。
投球・ラケット競技
野球、ハンドボール、テニス、バレーボールなどでは、腕を上げて外側へひねる位置で肩に大きな負荷がかかります。軽い投球やスイングから開始し、距離、強度、回数を一つずつ増やします。
手術が検討される場合
初回の肩関節脱臼は、損傷の状態によって保存療法で復帰を目指せる場合があります。一方で、
- 脱臼や亜脱臼を繰り返している
- リハビリ後も肩が抜けそうになる
- スポーツや仕事に大きな支障がある
- 関節唇や靱帯の損傷が大きい
- 関節面や上腕骨頭の骨損傷がある
- 若い競技者で再脱臼リスクが高い
といった場合には、手術が検討されます。治療方法は、年齢、競技、脱臼回数、関節唇や骨の損傷などを考慮して整形外科医が判断します。
手術後のリハビリについては、「肩関節脱臼手術後のリハビリ」として別ページで扱います。
プラストレーナーズでの取り組み
- 肩関節の状態を確認
- 肩の可動域
- 脱臼や亜脱臼の回数
- 不安定感が出る姿勢
- 腱板筋力
- 肩甲骨の動き
- 左右差
- 腕を上げた位置での安定性
などを確認します。
肩だけでなく全身を評価
投球やコンタクトプレーでは、肩だけでなく体幹や下半身も関係します。胸郭、体幹、股関節などを確認し、肩だけに負担が集中しにくい身体の使い方を身につけます。
段階的な筋力トレーニング
チューブや軽いダンベルから始め、ケーブル、プッシュアップ、ウエイトトレーニングなどへ進めます。単にインナーマッスルを鍛えるだけでなく、実際のスポーツや仕事で必要となる強さと持久力を回復させます。
競技復帰トレーニング
投球、サーブ、転倒、接触など、競技で肩に加わる負荷を想定して段階的に練習します。痛みがないことだけでなく、不安なく競技動作を行える状態を目指します。
このような方はご相談ください
- 肩関節脱臼後のリハビリを受けたい
- 整復後、肩の動きや筋力が戻らない
- 腕を上げると肩が抜けそうになる
- 肩の脱臼や亜脱臼を繰り返している
- スポーツ復帰に不安がある
- コンタクトプレーへ戻りたい
- 投球やサーブを再開したい
- 病院でのリハビリ終了後も不安定感が残っている
- 手術をせずに競技復帰を目指している
- 手術が必要かどうか整形外科で相談している
肩が元の位置に戻ることをゴールにせず、再び外れないための筋力とコントロール能力を取り戻すことが大切です。
プラストレーナーズでは、肩関節の機能回復から、仕事やスポーツに必要な動作の再獲得までサポートします。


