スポーツをしていて腰が痛くなり、病院でMRIなどを撮ったあと、「腰に炎症があります」と言われることがあります。

すると選手や保護者から、
「炎症なら休んだ方がいいですか?」
「痛みはそこまで強くないので、プレーしながらでもいいですか?」
と聞かれます。

でも、僕はまず、「どこに炎症があるのか?」を確認します。

なぜなら、「炎症」は診断名ではないからです。
骨なのか。筋肉なのか。椎間関節なのか。椎間板なのか。

同じ「腰に炎症」という説明でも、どの組織に問題が起きているかによって、スポーツを続けていいのか、一度止めた方がいいのかは大きく変わります。
成長期なら、まず腰椎分離症の初期を考える
PlusTRAINERSで成長期の選手の腰痛を見るとき、特に注意しているのが腰椎分離症です。
腰椎分離症は、腰椎の後方にある椎弓部分に繰り返しストレスが加わることで起こる骨ストレス障害です。

初期では、まだCTなどで明らかな骨折線が確認できなくても、MRIでは骨髄浮腫、いわゆる骨のストレス反応が見つかることがあります。MRIは、このような早期の病変を見つけるために有用です。

つまり、まだ完全に分離してはいないけれど、疲労骨折へ向かっている段階があります。

ここで大切なのが、初期であるほど骨癒合を目指せる可能性があることです。
だから成長期の選手でMRI上、骨にストレス反応が出ているのであれば、「痛みが我慢できるから続けよう」とは簡単には考えません。

年齢、分離のステージ、片側か両側か、競技レベルなどによって判断は変わりますが、完全分離へ進行するのを防ぎたい時期なら、競技を休む意味があります。

実際、初期の腰椎分離症ではスポーツ活動を制限しながら骨癒合を目指す保存療法が広く行われています。

最近では、非常に初期の分離症で、条件を選びながら競技を継続して骨癒合が得られたという小規模な報告もあります。ただし症例数は少なく、「初期分離症でも普通にプレーしていい」と結論づけられるものではありません。

初期だからこそ、一度止める価値がある。
ここは成長期の腰痛ではかなり重要だと思っています。
大人の「腰の炎症」は少し話が変わる
一方、大人のスポーツ選手では事情が変わってきます。
もちろん大人でも腰椎分離症や骨ストレス障害はあります。

ただ、PlusTRAINERSで大人の腰痛を見ていると、椎間関節周辺に負担がかかっているケースもよく経験します。

スポーツ選手の腰痛についてのレビューでも、腰を反ったときに痛むタイプでは、成長期では腰椎分離症が重要なのに対し、大人では椎間関節への過負荷が原因となることがあるとされています。

椎間関節は腰椎の後方にある関節で、腰を反る、ひねるといった動きで負担がかかりやすくなります。
ただし、椎間関節由来の腰痛には「これがあれば確定」という症状や画像所見があるわけではありません。画像上の変化と痛みが必ず一致するわけでもなく、診断には注意が必要です。

筋肉や椎間板が痛みの原因になることもあります。
特に椎間板由来の腰痛は、腰を曲げる動作で症状が出やすい傾向があります。一方、椎間関節や腰椎後方組織では伸展時に症状が出ることが多いとされています。

ただ、これも症状だけで決めつけるものではありません。

だからこそ、「腰に炎症があります」で話を終わらせないことが大切です。
プレーしながら治してもいい腰痛もある
では、大人の筋性腰痛や椎間関節周辺の痛みなら、全部休む必要があるのでしょうか。
僕はそうは考えていません。

痛みが強くない。
プレーをしても悪化しない。
翌日に症状が大きく増えない。

そういった状態であれば、できる範囲でスポーツを続けながらリハビリを進めることもあります。

実際、スポーツ選手の腰痛についても、筋・靱帯由来の慢性的な腰痛では、運動や競技を続けながら管理できる場合がある一方、腰椎分離症が疑われる場合には痛みを我慢して競技を続けることは一般的に勧められていません。

ここでも重要なのは、「炎症があるかないか」ではなく、「何の組織に、どの程度の問題があるのか」です。

骨のストレス障害と筋肉の張りを、同じ「炎症」という言葉で扱うことはできません。
プレーを続けるなら、痛みだけを見ない
プレーを続けられる腰痛だったとしても、「痛みが我慢できるから、そのままでいい」というわけでもありません。

PlusTRAINERSでは、まず身体機能を見ます。
特に確認するのは、股関節など必要な可動域があるか、体幹を安定させられるかという部分です。

腰そのものが悪いから、腰だけを鍛える。という考え方ではありません。

例えば股関節が十分に動かない選手が、スイングや投球で大きな回旋をしようとすれば、その分を腰椎の回旋や伸展で補うことがあります。

体幹機能が不足していれば、走る、跳ぶ、投げるといった動作のたびに腰椎が必要以上に動いていることもあります。

そして身体機能を確認したあとに、実際の動作を見ます。

腰を反りすぎていないか。
股関節ではなく腰で動いていないか。
骨盤や体幹をコントロールできているか。
投球やスイングで腰椎に負担が集中する動きになっていないか。

腰が痛い場所を見るだけではなく、なぜそこに負担が集中したのかを見る。
ここが大切です。
安静にして痛みが消えても、原因まで消えたとは限らない
腰痛は、競技を休むことで痛みがなくなることがあります。

負荷がなくなったのですから当然です。

でも、
痛みがなくなったことと、その負荷に耐えられる身体になったことは別です。

例えば股関節が硬いまま。
体幹機能も変わっていない。
競技動作も以前と同じ。
その状態で数週間休み、痛みだけが消えたあとに、また以前と同じ量の練習を始める。

それでは、再び腰に同じストレスが集中しても不思議ではありません。

特にスポーツ選手の腰痛では、過去の腰痛歴や急激なトレーニング負荷の増加なども、その後の腰痛と関連しています。

休むのであれば、
休んでいる間に身体を変える。
これが重要です。

腰椎分離症でも同じです。
骨癒合を待つために競技は休む。
でも、リハビリまで休む必要はありません。

医師の許可範囲で、股関節の可動域や体幹機能など、腰に負担を集中させない身体づくりを進めておく。

そうすれば、骨が治ったときに「ここから身体づくりを始める」のではなく、すでに競技復帰へ向けた準備が進んでいます。
「休むか、続けるか」の前に考えること
腰が痛くなったとき、
「プレーしていいですか?」
「安静にした方がいいですか?」
と考えるのは当然です。

でも、その前に確認したいことがあります。

何が傷んでいるのか。

成長期で骨にストレス反応が出ているのなら、完全分離を防ぐために一度競技を止める意味があります。
一方、筋肉や椎間関節などの問題で、症状が悪化しないのであれば、身体機能を改善しながらプレーを続けられる場合もあります。

だから、
「炎症だから休む」でもない。
「痛みが軽いから続ける」でもない。

どの組織に問題が起きているのかを見極めて、その組織に合わせて負荷を決める。
そして、休む場合もプレーを続ける場合も、股関節の可動域や体幹機能を改善し、そのあとに競技動作まで見直していく。

「腰に炎症があります」で終わらせず、その先まで考える。

腰痛から安全に、そしてしっかり競技へ戻るためには、そこが大切だと思っています。