学生の選手と話していると、意外と多いのが睡眠不足です。
学校がある。部活がある。塾や宿題もある。家に帰ってからスマホを見ていたら、気づけば夜中。

身体を大きくしたい。身長も伸ばしたい。競技力も上げたい。
そのためにトレーニングを頑張って、食事もたくさん食べている。

でも、寝ていない。

これはかなりもったいないと思っています。
「寝ると身長が伸びる」は本当?
よく「成長ホルモンは寝ている間に出るから、身長を伸ばしたければ寝なさい」と言われます。
これは大きく外れてはいません。

成長ホルモン(GH)は一日中一定量が出ているわけではなく、脈を打つように分泌されます。そして睡眠後、特に深い睡眠と関連して大きな分泌が起こることが知られています。

ただし、「たくさん寝れば、その分だけ身長が伸びる」というほど単純ではありません。

身長には遺伝的な要素が大きく関係し、栄養状態、ホルモン、思春期に入る時期、病気の有無など、多くの要因が影響します。

実際、子どもの睡眠時間と最終的な身長との関係については、まだ十分に明らかになっていません。レビューでも「睡眠不足が身長の伸びを直接低下させる」と断定できるだけの研究は不足しているとされています。

一方、日本の5万人以上の幼児を対象にした研究では、1歳半の夜間睡眠が長かった子どもの方が3歳時に高身長である割合が高かったという関連も報告されています。ただし、これは幼児の観察研究であり、「長く寝たから背が伸びた」と証明したものではありません。

つまり科学的には、
「寝れば寝るほど伸びる」とは言えない。
でも、成長期に必要な睡眠を削る理由もない。

というのが適切だと思います。
「夜10時から2時」が絶対ではない
これもよく聞く話です。

「成長ホルモンが出るゴールデンタイムは22時から2時だから、その時間には絶対寝ていないといけない」
そこまで固定されたものではありません。

成長ホルモンの大きな分泌は、時計の時刻そのものよりも、眠りについてから最初の深い睡眠との関連が強いことが分かっています。睡眠時間をずらすと、成長ホルモンの分泌もそれに伴ってずれることが古くから確認されています。

だから「22時を1分過ぎたからアウト」という話ではありません。
ただ、だからといって夜中の1時、2時まで起きていていいわけでもありません。

学生は朝起きる時間がほぼ決まっています。
寝る時間が遅くなれば、単純に睡眠時間が短くなるからです。
成長期なら、まず睡眠時間を確保する
米国睡眠医学会では、6〜12歳では1日9〜12時間、13〜18歳では8〜10時間の睡眠を推奨しています。

中高生で毎日6時間程度しか寝ていないのであれば、まずそこを見直してほしいと思います。
しかも学生アスリートの場合、学校生活に加えて練習や試合という大きな身体的負荷があります。
睡眠は身長だけのためではありません。

トレーニングからの回復、翌日の運動パフォーマンス、集中力などにも関係します。若いアスリートは睡眠時間を確保しにくい集団であり、睡眠不足とスポーツ傷害との関連も報告されています。ある中高生アスリートの研究では、平均睡眠時間が8時間未満だった選手は、8時間以上の選手より傷害経験が多かったという結果もあります。ただし、これは観察研究なので睡眠不足が直接の原因と断定するものではありません。
トレーニングして、食べて、寝る
身長には遺伝があります。
どれだけ努力しても、自由に身長を決めることはできません。

でも、成長期に必要な栄養を摂らない。慢性的に睡眠時間を削る。身体に不調があっても放置する。
そうすれば、本来伸びる可能性があったものを取りこぼすことは考えられます。

だから僕は、学生アスリートには「身長を伸ばすために寝ればいい」というより、成長できる環境を自分から潰さないために、ちゃんと寝よう!と伝えたいです。

夜遅くまで自主練習をする。
帰ってからさらに筋トレをする。
それも頑張っている証拠かもしれません。

でも、毎日睡眠を削ってまでやることが、本当に身体を強くすることなのかは考えてほしい。

身体を作るのは、トレーニングをしている時間だけではありません。
しっかり動く。しっかり食べる。そして、しっかり寝る。

成長期の選手には、この当たり前のことを大切にしてほしいと思います。