第1回では「キレとは何か」第2回では「キレを出すための身体能力」について書きました。

では、筋力もある。ジャンプ力もある。スプリント能力もある。
それなのに、「今日はなんかキレがない」という日はなぜあるのでしょうか。

一つ大きな要因になるのが、疲労です。
能力があっても、発揮できるとは限らない
トレーニングによって筋力やパワーを高めても、それを毎日100%発揮できるわけではありません。

前日の練習や試合、ウエイトトレーニングの疲労が残っていれば、その日のジャンプやスプリント、切り返しのパフォーマンスは低下することがあります。

実際、筋損傷を伴うような強いレジスタンストレーニングやプライオメトリックトレーニングの後では、スプリントや方向転換、CMJなどの能力が一時的に低下することが報告されています。研究によって条件は違いますが、影響が72時間程度続いた例もあります。

つまり、

能力そのものがなくなったわけではない。
その日に持っている能力を十分に発揮できていない。

ということが起こります。

これを「キレがない」と感じている場合も多いと思います。
キレがない日に、さらにキレ出し?
ここで少し考えてほしいところです。

キレがないから、ジャンプをやる。
キレがないから、ダッシュをやる。
キレがないから、もっと速い動きをやる。

もちろん、ウォーミングアップとして適切な刺激を入れることで動きが良くなることはあります。

でも、原因が強い疲労や回復不足なら、キレ出しのトレーニングを追加することが根本的な解決になるとは限りません。
高い出力を出したいのに、疲れた状態でジャンプやスプリントを繰り返せば、むしろ低い出力で動くことになります。

「何を足すか」よりも、まずなぜ今日はキレが出ていないのかを考える必要があります。
睡眠もキレに関係する
疲労は、練習量だけの問題でもありません。

睡眠不足によって、スピードや爆発的な運動能力、スキルなどが低下することも報告されています。2024年のメタ解析でも、急性の睡眠不足はアスリートのスピードや爆発的パフォーマンスを含む複数の能力に悪影響を与えていました。

どれだけ良いトレーニングをしていても、疲れている、寝ていない、回復できていない。そんな状態では、本来持っているキレを出しにくくなります。
だからコンディショニングも、キレを考える上では重要です。
「キレを上げる」だけではなく「キレを落とさない」
トレーニングでは、どうしても「もっと能力を上げよう」と考えます。
もちろんそれは必要です。

ただ、試合期になると少し考え方を変える必要があります。
せっかく筋力やパワー、スプリント能力を高めても、試合当日に疲労でその能力が出なければ意味がありません。

だから、試合が近づけばトレーニングの量を調整する。高い出力を維持しながら、必要以上に疲労を残さない。
キレを高めるトレーニングと、キレを発揮するためのコンディショニング。両方が必要です。

「今日はキレがない」と感じたときに、すぐ新しいトレーニングを足すのではなく、能力が足りないのか。それとも、今日はその能力を発揮できる状態ではないのか。
ここを見極めることも大切だと思います。

キレを作る。
そして、作ったキレを落とさない。

試合で良い動きをするためには、そこまで含めてトレーニングだと考えています。