毎週何度も走り、大会にも出ている。それだけ運動していれば、身体もしっかり鍛えられているように感じるかもしれません。
でも、走り続けていることと、走るために必要な身体能力がすべて維持できていることは同じではありません。
年齢を重ねれば、持久力だけでなく筋力や筋パワー、柔軟性なども少しずつ低下していきます。
だからこそ、中高年になってから長くマラソンを続けたいのであれば、「どれだけ走るか」だけではなく、走るための身体をどう維持するかにも目を向けてほしいと思います。
マラソンにも筋力は必要です
ランニングというと、どうしても心肺機能や走行距離に目が向きます。タイムが落ちてくると、「もっと走らなければ」「もっと距離を踏まなければ」と考えがちです。
もちろん走る練習は必要です。
ただ、ランニングは一歩ごとに自分の体重を受け止め、そこから再び地面を押して前へ進む運動です。それをフルマラソンなら何万歩も繰り返します。
そこには当然、筋力が必要です。
特に年齢とともに筋力が低下してくると、同じ体重、同じペースで走っていても、一歩一歩の負担は自分が持っている能力に対して相対的に大きくなります。
若い頃には余裕を持って処理できていた負荷が、年齢とともに少しずつ大きな負担になっていくわけです。
筋力トレーニングをランニングに加えることで、ランニングエコノミー、つまり同じ速度で走るために必要なエネルギー効率が改善する可能性も示されています。
ですから、中高年ランナーにとって筋力トレーニングは、単に「ケガをしないための補強」ではありません。
ランニングパフォーマンスを維持するためのトレーニングでもあります。
「昔と同じ距離を走れている」だけでは分からない
加齢による身体能力の低下は、急に起こるわけではありません。毎年少しずつ変化するため、自分ではなかなか気づきません。
マラソンの場合はタイムが数字として出るので、ゴルフなどに比べれば体力低下には気づきやすいと思います。
それでも、「タイムが落ちた=持久力が落ちた」とだけ考えてしまうことがあります。
実際には、脚の筋力が以前より落ちているかもしれませんし、短時間で力を出す能力も低下しているかもしれません。股関節や足関節の動きが悪くなり、以前と同じフォームを保ちにくくなっている可能性もあります。
特に後半になって脚がもたなくなる場合、心肺機能だけではなく、一歩一歩を支える筋力の余裕が小さくなっていないかという視点も必要です。
走る量を増やす前に、走るための身体がどうなっているかを一度確認する。
中高年以降では、これがとても重要だと思います。
ケガなく走り続けるためにもフィジカルを
ランニングでは、同じ動作を長時間繰り返します。そのため、膝や足部、アキレス腱、ふくらはぎ、ハムストリングス、股関節などにトラブルを抱えるランナーも少なくありません。
もちろん、筋力トレーニングをすればすべてのランニング障害を防げるわけではありません。
走行距離、ペース、シューズ、過去のケガ、フォームなど、さまざまな要因が関係します。
ただ、走るという負荷を受け止めるためには、下肢や体幹に十分な筋力があり、必要な関節可動域が保たれていることが土台になります。
特に中高年では、走る量は以前とそれほど変わっていないのに、それを支える身体能力だけが少しずつ落ちているということがあります。
その状態でさらに走行距離を増やすよりも、筋力を取り戻したり、必要な柔軟性を改善したりする方が先になる場合もあります。
柔軟性も年齢とともに変わる
筋力と同じように、身体の動きやすさも年齢とともに変化します。ランナーであれば特に、股関節や足関節などに必要な可動域が保たれているかは確認しておきたいところです。
ただし、柔らかければ柔らかいほど良いという話ではありません。
ランニングに必要な範囲でしっかり動ければ十分です。
身体が硬くなり、以前と同じストライドが出せない。股関節をうまく使えず、膝やふくらはぎばかりに負担がかかる。
そういった場合には、柔軟性の改善も必要になります。
大切なのは、ストレッチだけをするのではなく、必要な可動域を確保したうえで、その範囲を自分の筋力で使える身体を作ることです。
走ることだけがランニングトレーニングではない
ランナーは走ることが好きです。時間があれば10km走る。休日なら20km、30km走る。
それ自体はもちろん大切です。
でも、50代、60代になっても長く走り続けたいのであれば、その時間の一部を筋力トレーニングや身体のメンテナンスに使うことも必要だと思います。
筋力を維持し、必要な可動域を保ち、自分の身体をしっかり支えられる状態を作っておく。
それが結果として、ランニングパフォーマンスの維持にも、ケガの予防にもつながっていきます。
そして何より、今行っている身体づくりはマラソンのためだけではありません。
50代、60代で筋力を維持することは、その先の70代、80代で歩く、立ち上がる、階段を上るといった能力にもつながります。
速く走るために始めた筋トレが、結果として将来も自分の脚で動き続けるためのトレーニングになっていく。
それでいいと思います。
走り続けたいからこそ、走る以外のトレーニングもする。
中高年ランナーには、走行距離だけではなく、筋力や柔軟性を含めたフィジカル全体に目を向けてほしいと思います。

