実際、走れるし、投げられるし、バットも振れる。日常生活で困ることもない。
でも、ここで一つ考えておきたいのが、野球を続けていることと、筋力やパワーが維持できていることは同じではないということです。
年齢を重ねると、筋力や柔軟性だけでなく、身体を素早く動かす能力や、短い時間で大きな力を出す能力も少しずつ低下していきます。
しかも、この変化はある日突然起こるわけではありません。
毎年少しずつ変わっていくので、自分では意外と気づきにくいものです。
頭の中のイメージと、今の身体
野球を長くやっている人ほど、動きのイメージは身体に残っています。この打球なら追いつける。この距離なら強く投げられる。このタイミングなら一気に走れる。
特に昔から野球をやってきた人は、頭の中では以前と同じように動ける感覚が残っています。
でも、そのイメージを作った頃と、今の身体能力が同じとは限りません。
加齢によって低下するのは単純な筋力だけではなく、速く力を発揮する筋パワーも含まれます。10年間にわたって筋機能を追跡した研究では、40〜60歳でも膝伸展の最大筋パワーは年々低下しており、さらに年齢が上がるにつれてその低下が大きくなることが報告されています。
野球は、まさにこの「速く力を出す能力」が必要なスポーツです。
一塁までの全力疾走も、打球への反応も、スイングも投球も、ゆっくり力を出せばいい動作ではありません。
だから、普段の生活では問題がなくても、野球に必要なフィジカルだけが少しずつ落ちているということは十分に考えられます。
毎週野球をしているから大丈夫、とは限らない
草野球を毎週やっていれば、当然まったく運動していない人より活動量はあります。ただ、それだけで筋力や筋パワー、スプリント能力まで十分に維持できるとは限りません。
平日はほとんど座って仕事をしていて、高強度の運動はほぼしない。それでも週末になると突然全力で走り、強く投げ、思い切りバットを振る。
草野球では、こうしたパターンはかなり多いと思います。
問題なのは、普段身体に与えている刺激と、試合で身体に求める強度との差が大きいことです。
身体の準備が十分ではない状態で、昔と同じ感覚のまま突然高い出力を出そうとすると、当然負担は大きくなります。
「昔はこれくらい普通にできた」という感覚が残っている人ほど、今の身体とのギャップには少し注意が必要です。
今の身体に野球を合わせるのか
ここで考え方は大きく二つあります。今のフィジカルに合わせて、プレーの強度を少し落とす。
それも一つの選択です。
無理に全力疾走しない。昔ほど強く投げない。今の身体に合わせて草野球を楽しむ。
それで十分という人もいると思います。
一方で、「もう少し速く走りたい」「まだ強い球を投げたい」「もっと打球を飛ばしたい」と思うのであれば、話は変わってきます。
その場合は、技術だけで何とかしようとするのではなく、そのプレーを可能にする身体能力をもう一度作っていく必要があります。
バッティングセンターに行くことも、キャッチボールをすることも、フォームを見直すことも大切です。
でも、下肢筋力が落ち、股関節や肩の動きも悪くなり、何年もジャンプやスプリントをしていない状態で、昔と同じ出力だけを求めても身体はなかなかついてきません。
今の身体にプレーを合わせるのか。
それとも、やりたいプレーに合わせてフィジカルを取り戻していくのか。
草野球を長く続けるのであれば、ここは一度考えておいた方がいいと思います。
「歳だから」で終わらせる必要はない
年齢を重ねること自体は止められません。でも、筋力や筋パワーが落ちていくのを何もしないで見ている必要もありません。
レジスタンストレーニングは、年齢を重ねてからでも筋力や身体機能を改善する有効な方法です。
草野球を続けたいのであれば、まずは脚の筋力を落とさないこと。片脚で身体を支えられること。押す、引く、回旋するといった基本的な力を維持すること。
そのうえで、走る、跳ぶ、素早く動くといった刺激も少しずつ入れていけば、野球に必要なフィジカルに近づいていきます。
そして、そのトレーニングを支えるのが栄養です。
年齢とともに身体が変わるからこそ、トレーニングと食事の両方を意識していくことが大切になります。
草野球のためだけではない
ここまで草野球の話をしてきましたが、これは野球だけの話ではありません。40代、50代で筋力を維持することは、その先の生活にもつながります。
今は普通に歩けるし、階段も上れる。
でも、その身体能力が10年後、20年後も自動的に残っているわけではありません。
スポーツをするために筋力をつける。
速く走るためにトレーニングする。
その積み重ねが、将来的には歩く、立ち上がる、階段を上る、転ばないといった生活の土台にもなります。
つまり、草野球のために始めた筋力トレーニングが、結果として健康寿命を延ばすための身体づくりにもつながっていきます。
何歳になっても野球を楽しめる身体を
加齢は止められません。でも、加齢によるフィジカル低下には抗うことができます。
毎週草野球をしているから大丈夫、ではなく、野球をするための身体も維持しておく。
昔と同じようなプレーをしたいのであれば、それを支えるフィジカルも作っていく。
そして、その身体づくりは草野球のパフォーマンスだけではなく、10年後、20年後の自分の身体にもつながります。
何歳になっても野球を楽しめる身体でいるために。
野球を続けることと、身体を鍛えること。
この二つをセットで考えていきたいと思います。

